
寿楽温泉に棲む座敷わらし(寿楽童子)、のあの物語
妖怪も現代風に姿もかわり、のあは学生の姿。
もう100年以上もこの地に住み続けてる。
銭湯の主人が変わっても、町内の様子が変わっても、
のあはずっと見守り続けています。
いたずら好きの座敷わらし

のあはいたずらが大好きな妖怪。
人間には姿が見えないから、やりたい放題。
二人にとって今日は特別な日。
一緒にスマホで写真を撮ったり、美味しいランチやスイーツを食べたり、とにかく時間を大切にしたいと事前にプランを作ったけど、早くもボロボロに崩れてしまっています。
そんなことも、気づけば一緒に笑ってしまう。
なにかと笑顔が絶えない姉妹です。

「なぁ、かくれんぼしよっ」
たまに姿を見ることができる人間がいるので、のあは遊びに誘います。

のあ、みぃつけたぁ~。
「すぐ見つかっちゃった。
妖怪やのに隠れんのん下手すぎるよな」

のあの相談役のユキオさん。
のあのほうが年上やけど、すっごい物知りで、どんな相談でも話を聞いてくれるから大切な存在なの。
年季の入った銭湯のゆっくりした時間の中で…

「いらっしゃいませ~
いつもこの番台に座って接客してるねん。
でも、のあの姿は誰にも見えへんけどな。」

寿楽童子のあは、妖怪なので人間とは時間の感覚が違います。
見た目は15歳でも実際は250歳以上だとか。
のあは、それが寂しいと思うときがあるようです。

真夏の昼下がり、畳の上で微睡む和室は気持ちがいい。
涼やかな風が頬をなで、遠くの蝉の声が夢の中へと誘う。
おやすみ、のあ。

のにおいに癒やされながら
窓の外を見つめるのあ。
和室でくつろぎながら
のあの瞳は窓の外へ。
何をみつめているのだろうか?
夏の陽射しが優しく差し込み、
風鈴の音が微かに響く。
のあの表情は
何か深い思索をしているかのよう。
過去と未来を繋ぐ心の糸のように。

人間には分からない、のあだけが知る過去を想う。
緑の庭、遠くの山々、蜩の声が静かに耳にとどく。
のあの瞳に映る景色は、現実と夢の狭間に揺れる。
かつての友人、失われた約束、無数の季節を超えてきた記憶・・・

のあの目に映る景色は、過ぎ去りし日々と、これからの時を繋ぐ道。
彼女の物語は、誰にも語られることのない、一瞬の夢のように美しい詩のようなもの。

笑い声、話し声、時に涙、人々の感情が風のように流れる空間。
のあは心の中で共に笑い、共に楽しみ、共に泣く。
「人間って面白い、生きているって素敵やな」
そう思いながら、のあは微笑んだ。

「ほら、身長伸びたよ。のあはまだ成長期やねん」
人間と一緒に笑い、ときどき話をする。
そのひとときが、のあにとっての宝物。
人間世界に生きる喜びを感じながら、寿楽童子のあは、今日もここで人の営みを眺めている。
「寿楽童子」おしまい。
被写体モデル/
のあ @n_o_a_720
撮影日/2024.6.9
撮影場所/大阪市 寿楽温泉
モデル所属事務所(撮影会主催)/ ななサク撮影会 @nanasaku31
創作ノート
大阪にある営業中の古い銭湯を貸し切っての撮影でした。湯船には水がはられていているのでカメラ機材の結露対策を万全にする必要があります。午後からはお風呂が沸くので、レンズがすぐに曇ってしまいます。銭湯の撮影は楽しいけれど、そんな難しさがあります。
モデルののあさんの、無邪気なそのままの姿を活かしたいと思って、「座敷わらし」をモチーフにして物語を作りました。現代の座敷わらしなので、衣装は制服を選択。
制服にしたことで、のあさんの中学生らしい等身大の姿が撮影できたので良かったです。
のあさんは、何度も撮らせてもらっているから、お互いに呼吸が合うので撮影がやりやすい。はじめてのモデルさんだと緊張してしまうから、いつも楽しませてもらっています。
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